恋多きブロガー、25歳ニート
いまの会社に入って5回失恋している。
失恋といっても、「告白して振られた」という高尚でハイレベルな話ではなく、ただ一方的に慕って、ただ一方的にこちらが諦めただけだ。
ある女の子には彼氏がいることを知り、またある女の子には挨拶しても無視されるようになり、さらに別の女の子には冷たい言葉をかけられるようになった。
ちなみにどの女性とも多くて3分程度しか話したことがない。
「そんなものは失恋とは呼ばないよwww」
って言われるかもしれないが失恋は失恋だ。
つまり、あの子たちと僕との間の恋が永遠に失われてしまったのだ。
その失恋の一つのcaseを紹介したい。
その女性はスモーカーだった。
喫煙所にいるといつもは話さない人たちともコミュニケーションを取れる。
たばこのおかげだろうか。
いつもは雑談などが苦手な俺も、喫煙所では上司とも会話ができる。やはり会話が止まることは多いが、それでもたばこが片手にあるので沈黙も苦にならない。
喫煙所にその女性はいた。
ほとんど同い年の女性で姉御肌のしっかりした人で、いつもその手に持つハイライト
が妙に似合っていた。肉付きはよくないが、すらりとしてやり手のOLみたいな風貌をしていた。
業務で何度か会話を交わしているうちに俺は恋に落ちた。
恋に落ちるまでの特別なエピソードはない。アニメではないんだ。恋にストーリーはいらなかったし、俺の恋とはいつもそのようなものだ。
スモーカー同志ならばいつか会話をする機会があると思い、いつも俺はドキドキしていた。その子の隣に自分で行く勇気など持ち合わせていなかったが。
ある日、たまたまその子が俺の隣に立った。
その子は「あれ、こうやって会話するの初めてですね」と微笑んだ。その笑顔を見て、俺の恋が加速する音が聞こえた。心臓の鼓動は早くなり、頭がぐるぐるし始める。
このまま話を続けてこの子に関心を持ってもらいたいとおもった。
俺はなんとか話を繋げようとおもった。面白くて会話をする価値がある、また話しかけたくなるような人間であることを示そうと言葉を紡いだ。
しかし、俺の口から出る言葉は全て噛みまくり、「あ、あ、あ、そうですね。はじめてでしね」とどもった。口から出る言葉全てが俺の言葉ではなくなったように思えた。顔を一度もちゃんと見られない。
なんとか面白いエピソードを、面白ワードを、この子を笑わせるためのワードを、とおもったが、頭に浮かび上がるのは下ネタ・自虐ネタ・他人を落とすネタだった。一番ましな自虐ネタを放ってみたが、反応は芳しくない。女の子は退屈そうにし、その心は既に俺の隣になく、喫煙所を離れたようだった。
「もういきます」
と軽く冷たく聞こえる口調で女の子はたばこを消し、去った。
俺は缶コーヒーを一口飲み、涙も一緒に飲み込んだ。
ひとつ反省するならば、面白いことを言おうとおもったのが間違いだ。普通に話せばいいのだ。仕事のこととか天気のこととか。その中で少しずつアピールすればよかった。いきなり面白エピソードや面白ワードを披露しようとする人間などきもいだけだ。
でも、もう遅い。
俺の心は折れた
かに思えた。
が、数日前、またチャンスはやってきた。
その子が喫煙所で一人ハイライトを片手に立っていた。
先日の反省点を生かして、次は自分から攻めよう。
俺は勇気をだし、その子から少し離れた隣に立った。
その子は気づいてない。
声をかけようと思った。
が、声帯は岩石のように固まり声がでない。勇気がでない。
だから、あちらから声をかけてくれないかと切に願った。
しかし、願いは届かなかった。
その子は俺の方をちらりと見て、挨拶もせずにそのまま喫煙所を後にした。
慟哭
悲しいので、女性ブロガー、俺のファンになってデートしにきてほしい。
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